パートナー様の声(株式会社ワンネスサポート 寺島様)
ヒト臨床試験とはどんなものですか?
ヒト臨床試験とは、商品の安全性や有効性を確認するために行うテストのこと。対象となる商品を被験者(人)に使用してもらい、そのデータを集積・分析するのが「ヒト臨床試験」ということになります。「血糖値の上昇を抑える」働きがあると表示できる、トクホ(特定保健用食品)商品を例にとってお話しましょう。臨床試験ごとに調査人数や期間は異なりますが、被験者の方には期間中、決められた量のトクホ商品を摂取していただきます。そして、スタート時・4週間後・8週間後というように定期的に集まってもらい、一人ひとり血液検査などをして体調の変化をチェックし、データを集めて行くわけです。同じように医学部外品などの化粧品であれば、一定期間塗布した後の肌の水分量・シワ・弾力などをチェックし、評価することになります。
臨床試験にはいくつかの手法があり、その代表的なものが「ダブルブラインド試験」。対象商品とは別に有効成分を含まない商品を与えることによって、両者を比較しながら検証できる方法です。一方、有効成分についてのみ評価するのが「オープン試験」。この方法では、有効成分の働きによって使用前・使用後の体にどのような変化があらわれるかを検証します。ほかにも、使用感を視覚的に評価するVAS(Visual Analogue Scale)法によるアンケート調査などもありますから、予算や期間、目的などにあわせて活用いただくと良いのではないでしょうか。
ヒト臨床試験はなぜ必要なのでしょう?
試験結果データはトクホや医薬部外品の申請に使用できる一方で、自社商品の効果・効能を理解した社員のモチベーションアップにつながったというケースもあります。業界新聞に掲載されるプレスリリースとして発表することも可能ですし、論文投稿や学会発表といった展開も考えられるわけですが、望まれる結果を得るためには「試験デザイン」を慎重に行うことが大切。試験方法はダブルブラインドか、オープンか?症例はどの位のボリュームが必要か?さらに、必要な検査項目や検査期間など。データを活用する目的や予算をはじめ、クライアントからさまざまな要素をヒアリングし、アレンジして、ようやくヒト臨床試験がスタートします。もちろんクライアントの意向は最大限に尊重しますが、こちらの方から検査項目の追加や試験期間の延長などをご提案することもありますね。私たちの会社では臨床試験受託機関としてのノウハウをいかして、クライアントにとってよりよい試験結果が導き出せるようサポートしています。
臨床試験受託機関を選ぶ際のポイントは何でしょう?
数ある臨床試験受託機関の中から最適な一社を選ぶには、次に挙げる3つのポイントをチェックすると良いでしょう。第一のポイントは、【適正な試験デザインを提案するノウハウ】を持っているかです。ヒト臨床試験における評価項目の選定、被験者数やデータ取得期間などをトータルでアドバイスできないようでは、信頼できる機関とは言えません。また、大学や医療機関とのネットワークがあれば、試験デザインへの適切なアドバイスができます。試験結果データの考察をはじめ論文投稿や学会発表といった展開もスムーズに行えるため、大きなポイントとなります。
第二のポイントは【試験データ解析の柔軟性】です。臨床試験が終わるとその結果に基づいてデータを解析するわけですが、評価グラフに思うような結果があらわれないといったケースがあるんですよね。そうした場合、層別解析などの手法を使ってデータの再解析を行うことがあるのですが、良いデータを得るためには何度も打ち合わせをする場合もあります。私たち受託機関からすると手間のかかる作業になりますが、クライアントが期待する結果を出すためには必須の作業なんですね。受託機関の中にはこの再解析を別料金としている所もあるようですが、できれば再解析等の料金も含まれた柔軟性の高い提案をしてくれる会社を選ぶことをおすすめします。
そして、受託機関を選ぶ際に最も重要になる第三のポイントは【被験者さんを適正に管理する能力があるか】です。ヒト臨床試験の主役は、「人」。いくら綿密な試験設計をたてて運用をスタートしても、被験者さんが摂取を怠ったり、試験期間中の約束事を破るようでは正確なデータは得られませんよね。評価グラフからは見えない部分ですが、実は被験者さんの管理こそが臨床試験受託機関にとって最大のノウハウと言っても過言ではないのです。生身の「人」である被験者さん各々の性格を理解しながらコミュニケーションを取っているかどうか。真面目な方もいれば中にはそうでない方もいるため、一括りにして管理はできません。私たちは被験者募集の段階から、書類の記入が正確かどうか、予約時間通りに来院しているかどうか、問診の受け答えの仕方等から被験者さんがどのような性格かを判断し、個々にコミュニケーションの取り方を変えて行きます。あくまでもボランティアとして試験に参加してくれるわけですから、完璧を求めて厳しくなりすぎず、できなければできなかったと正直に報告してくれるような信頼関係を築いて行くことに注力しています。私たちは、こういった生身のコミュニケーションによって、品質の高い試験データが得られるものと考えております。
2015年度導入予定の「機能性食品」におけるヒト臨床試験について教えてください
アベノミクスの規制緩和のもとに検討が重ねられているのが、食品の機能性表示制度。これまで健康食品と呼ばれていたような商品について、科学的な根拠があることを条件に食品の機能性表示を認めようというものです。今のところ商品の表記に「血圧が高めの方に」や「骨を強くする」といった表現ができるのはトクホ商品に限られていますが、トクホを取得するためには、商品開発から臨床試験、国の審査など、膨大な時間と費用を要していました。新制度は、企業が参入しやすい環境を整えることによってマーケットを活性化させようというものですが、現段階ではまだ機能成分をはじめとした表示方法について、ガイドラインなどは公表されていません(2014年6月25日現在)。それでもやはり、商品の機能性を表示する上でヒト臨床試験は外せないプロセス。この1、2年ほどで臨床試験受託事業に参入する企業も増えて来ましたし、実際に私たちの会社にも大手食品メーカーなどから問い合わせのお電話を多数いただいています。いずれにしても、トクホや医薬部外品と同じように、機能性食品についても基準に基づいた試験デザインこそが重要になると考えています。
今後の展望についてお聞かせください
エビデンスなくしてモノが売れない時代を勝ち抜くには、何らかの形で商品の科学的根拠を実証することが必要。ヒト臨床試験をはじめとするエビデンス取得試験に対するニーズは、今後ますます高まって行くのではないでしょうか。新商品の発売から数年後に大きな予算でヒト臨床試験を行うのも一つの方法ですが、低予算のVASアンケートや小規模なオープン試験からスタートし、良い結果が得られれば中規模なダブルブラインド試験等を実施して、一歩ずつエビデンスを積み重ねるという方法も考えられます。また、薬事法や景品表示法をクリアできれば、試験結果データと商品を連動させて展開することも可能になるでしょう。私たちもこれまで培ってきたノウハウをいかして、あらゆるご要望にお応えして行きたいと思います。