ステルスマーケティング規制の現在地
投稿日:2025.10.01
更新日:2025.10.01
大正製薬「措置命令」と味の素「確約計画」にみる共通点
はじめに
2023年にステルスマーケティングが景品表示法上の「不当表示」として明確化されて以降、実務の現場では「どこまでが広告か」の線引きが大きなテーマとなっています。最近の二つの事例――大正製薬への措置命令と味の素の確約計画認定は、まさにその象徴といえるでしょう。
大正製薬:措置命令の事例
2024年11月、消費者庁は大正製薬に対し、サプリメント「NMN taisho」の宣伝方法を問題視し、措置命令を出しました。
インスタグラム投稿を広告素材として自社サイトに転載しながら、依頼投稿であることを明示せず掲載。消費者から見ると「自然発生的な口コミ」に見えるが、実際は事業者が関与した宣伝であり、「判別困難表示」(ステマ型表示)に該当すると認定。
措置命令では、
・消費者への周知徹底
・再発防止策の策定と社内周知
・今後同様の表示禁止
が義務付けられています。
味の素:確約計画の認定
一方、2025年9月には味の素らが共同販売する冷凍宅配食「あえて、」について、同様の「インスタ投稿レビュー活用」が問題となりました。ただしこちらは、措置命令ではなく確約計画という手続が用いられました。
企業側が「行為は既に中止」「今後同様のことをしない」「社内決議・再発防止策・消費者への周知徹底」を盛り込んだ計画を提出。消費者庁はそれを認定し、行政処分に至らず自主改善で終結。
共通点と相違点
両事例の共通点は明確です。
・SNS投稿を広告的に利用しつつ、依頼であることを明示しなかった点
・規制根拠は景品表示法第5条第3号(ステマ規制)
・消費者にとって広告と気付けない「判別困難表示」とされた点
相違点は行政対応です。
大正製薬:違反認定→措置命令。
味の素:違反認定はせず→確約計画認定(自主改善を前提に柔軟対応)。
業界への示唆
今回の流れが示すのは、「ステマ規制はすでに本格運用段階」に入ったということです。大手メーカーでも例外ではなく、広告・販促部門におけるSNS活用の透明性が強く問われています。特にインフルエンサーマーケティングやUGC(ユーザー生成コンテンツ)の二次利用では、「事業者関与の明示」が不可欠。
確約制度の活用により、企業側に自発的改善の余地は残されているものの、その計画には措置命令事例を参照したレベルの具体性と実効性が求められます。
まとめ
大正製薬の措置命令は「強制的な是正」、味の素の確約計画は「自主的な改善」。形式は異なれど、両者に共通するのは「ステマ的な広告手法は許されない」という一点です。業界にとっては、“自然な口コミと広告の境界”をいかに明示するかが今後のマーケティング活動における最大の課題となるでしょう。