• メルマガ登録
  • お問い合わせ

受付/平日 
9:00~18:00
TEL. 047-321-6124

  • メルマガ登録
  • お問い合わせ

お知らせ

デジタル取引時代における特定商取引法の見直し動向

―企業が押さえるべき現状と論点整理―

デジタル取引・特定商取引法等検討会(2026年1月22日)から消費者庁で開始されました。今後、想定される改定を事前に注視しておくことは重要なことです。


近年、ECやSNSを中心としたデジタル取引は急速に拡大しており、消費者の利便性向上に大きく寄与しています。一方で、こうした取引環境の変化に伴い、従来の法制度との間にギャップが生じていることが、消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」において議論されています。

現行の特定商取引法は、1970年代のカタログ通販やテレビショッピングを前提として制度設計されており、基本的には「広告を見た消費者が自ら申し込む」という構造を想定しています。このため、通信販売においては広告規制が中心。

しかし、現在のデジタル取引では、広告と勧誘の境界が曖昧になっています。SNSのダイレクトメッセージやチャット機能を通じて、消費者の意思決定に直接働きかける販売手法が広がっており、従来の「広告中心型」の規制では十分に対応できない場面が増えています。検討会でも、こうした取引形態については、実質的に電話勧誘や訪問販売と同様の性質を持つケースがあると指摘されています。


特に注目されているのが、SNSやチャットを用いた勧誘です。調査によれば、チャット経由で商品を購入した消費者のうち、約3分の2が後から不要と感じた経験があるとされており、不意打ち性や心理的な誘導の強さが問題視されています。また、通信販売全体の相談件数が横ばいである一方、SNS関連の相談は過去10年で大幅に増加しており、従来とは異なるトラブル構造が顕在化しています。

こうした状況を踏まえ、検討会では大きく二つの方向性が議論されています。一つは、インターネット取引全体に対する基本的な規律の見直しです。広告と勧誘を厳密に区別するのではなく、実態に応じて必要な義務や禁止行為を整理する必要があるとされています。もう一つは、特に「不意打ち性」「誘引性」「複雑性」が高い取引に対して、より強い規制を設けるべきかという論点です。


具体的には、チャット勧誘に対して電話勧誘販売と同様の規制(クーリング・オフや取消権)の適用を検討することや、勧誘目的を隠してオンラインセミナー等に誘導する手法に対して訪問販売類似の規制を課すこと、さらに複雑な契約内容を伴う取引については特定継続的役務や連鎖販売取引と同様の対応を検討することなどが挙げられています。

ただし、検討会においては一貫して「過度な規制は避けるべき」との認識も共有されています。悪質な事業者の排除は重要である一方で、通常の事業者の営業活動に過大な負担を課すことは、市場の健全な発展を阻害する可能性があるためです。このため、今後の制度設計は、悪質事業者の行為を的確に捉えつつ、一般的な事業活動には過度な影響を与えないバランスが求められます。


企業担当者として重要なのは、現時点で直ちに規制が変更されるわけではないものの、今後の方向性として「勧誘性の強いデジタル施策」がより厳しく見られる可能性がある点です。特に、SNS運用、チャット対応、LP設計において、消費者の誤認や過度な誘導と評価され得る表現・導線については、事前に見直しておくことが実務上有効と考えられます。

デジタル取引は今後も拡大が見込まれる分野であり、企業にとっても重要な成長領域です。その持続的な発展のためには、制度動向を踏まえた適切な対応と、消費者との信頼関係の構築が不可欠となるでしょう。