ステマ規制でSNOWに措置命令|PR表記なし投稿70件超が違反になった理由
投稿日:
2026.08.10
更新日:
2026.08.10
🎯 この記事のポイント
消費者庁は2026年8月6日、写真加工アプリ「SNOW」の利用サービスを提供する2社に対し、景品表示法違反(ステマ規制=第5条第3号)に基づく措置命令を出しました。対価を渡してX(旧Twitter)でPR表記のない投稿を第三者に依頼し、70件超が「一般消費者にとって事業者の表示だと判別しにくい表示」に該当すると認定されています。規制の名宛人は投稿者本人ではなく、投稿を「表示させた事業者(広告主)」です。本記事では、なぜ違反になったのか、そして依頼投稿を安全に運用するための実務上の条件を、広告表現の観点から整理します。
「利用者の感想として投稿してもらう」——SNSマーケティングでは珍しくない手法です。しかし、その投稿が「広告」であることを隠したまま行われれば、いわゆるステマ(ステルスマーケティング)として景品表示法違反になり得ます。今回の消費者庁の措置命令は、SNSでの依頼投稿がどこからアウトになるのかを示す、実務上わかりやすい事例です。
何が起きたのか|SNOW提供2社への措置命令の概要
消費者庁は2026年(令和8年)8月6日、写真加工アプリ「SNOW」の利用サービスを提供する2社(韓国のSnow Corporation社と、日本法人であるSNOW Japan株式会社)に対し、景品表示法第7条第1項に基づく措置命令を行いました。認定された違反は、同法第5条第3号(ステルスマーケティングに関する告示)への該当です。
公表資料によれば、SNOW Japanが第三者に対し、対価の提供を条件として、同社が指示する方針に沿った投稿をXで行うよう依頼していました。投稿は主にSNOWのAI画像生成・AI加工機能を紹介する内容で、令和7年(2025年)4月以降に始まり、一部は令和8年(2026年)6月まで表示され続けていたとされています。対象となった投稿は70件を超えると報じられています。
なぜ違反になったのか|ステマ規制の考え方
ステマ規制とは(景表法第5条第3号)
ステマ規制は、2023年(令和5年)10月1日に施行された比較的新しいルールです。景品表示法第5条第3号に基づく告示で、正式には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を不当表示として禁止しています。
ポイントは、表示の中身が本当かどうかではなく、「事業者による広告なのに、それが消費者に伝わらない」こと自体が問題視される点です。つまり、内容に嘘がなくても、広告であることを隠していればステマとして違反になり得ます。
「事業者の表示」と判定された理由
今回、投稿の見た目は一般利用者の感想でしたが、消費者庁は次の2点から「事業者の表示」と判断しました。第一に、事業者が対価の提供を条件に、自社が指示する方針に沿った投稿を依頼しており、表示内容の決定に事業者が関与していたこと。第二に、その投稿が事業者の依頼によるものであることが明示されておらず、表示全体からも事業者の広告であることが明瞭とは認められなかったことです。この結果、一般消費者が「広告であること」を判別するのが困難な表示に該当すると認定されました。
規制されるのは誰か|責任を負うのは広告主
ステマ規制で見落とされがちなのが「誰が責任を問われるか」です。規制の名宛人は、商品・サービスを供給する事業者(=広告主)であって、依頼を受けて投稿した第三者やインフルエンサー本人ではありません。「投稿したのは外部の人だから」「代理店やクリエイターに任せていたから」という説明は、事業者の責任を免れる理由にはなり得ません。
依頼投稿・アンバサダー施策・ギフティング(商品提供)など、事業者が表示内容に関与し、かつ対価や便益の提供がある場合は、その投稿が広告であることを消費者が分かる形にしておく責任が、広告主側にあると考えておくのが安全です。
✅ 依頼投稿を安全に運用するためのチェック
- 対価(金銭・商品・割引・特典など)を伴う投稿には「PR」「広告」「提供」など、広告であることが一目で分かる表記を入れているか
- 「#PR」がハッシュタグの末尾に埋もれたり、他タグに紛れて見つけにくくなっていないか
- 投稿文面や構成を事業者側が指示・確定している場合、その関与を隠していないか
- 代理店・インフルエンサーへの依頼書や契約に「広告である旨の明示」を義務づけているか
- 過去に投稿された分も含め、表示が残り続けていないか(掲載中の全投稿を定期点検しているか)
措置命令の内容と、課徴金との関係
今回の措置命令では、対象となる表示の速やかな取りやめ、当該表示が景品表示法に違反する旨の一般消費者への周知徹底、再発防止策の実施と役員・従業員への周知、そして今後同様の表示を行わないことが命じられています。
なお、ステマ規制(第5条第3号)は課徴金の対象ではない点も押さえておきたいところです。課徴金納付命令の対象は、優良誤認表示(第5条第1号)と有利誤認表示(第5条第2号)に限られます。ただし「課徴金がないから軽い」わけではありません。措置命令は社名の公表を伴い、レピュテーションへの影響は小さくありません。さらに、措置命令に従わない場合は刑事罰の対象にもなり得ます。
実務で気をつけたいポイント
今回の事案が示すのは、「感想の体裁」で投稿してもらうこと自体がリスクになるということです。良い口コミを自然に見せたい気持ちは分かりますが、対価が絡む以上、隠すほどリスクが高まります。むしろ「PR」と明示したうえで、商品・サービスの魅力を正しく伝える設計に切り替えるほうが、長期的にはブランドを守ります。
また、外部パートナーに依頼する際は、口頭の合意だけでなく、依頼書・ガイドライン・契約書のレベルで「広告表記の義務」を落とし込むことが重要です。加えて、施策終了後に投稿が残り続けていないか、掲載中の表示を棚卸しする運用も、今回のように「一部が長期間表示され続けていた」ケースを防ぐうえで欠かせません。
よくある質問(FAQ)
Q. 投稿内容が本当のこと(実際に使った感想)でもステマになりますか?
A. なり得ます。ステマ規制で問われるのは内容の真偽ではなく、「事業者の広告であることを消費者が判別できるか」です。対価を伴う依頼投稿で広告表記がなければ、感想が事実でも違反となり得ます。
Q. 「#PR」を付けていれば大丈夫ですか?
A. 付ける位置と分かりやすさが重要です。多数のハッシュタグの末尾に埋もれていたり、他の文言に紛れて見つけにくい場合は「明瞭」と認められないおそれがあります。投稿の冒頭など、消費者が一目で広告と分かる位置に表記するのが安全です。
Q. 投稿したインフルエンサーも罰せられますか?
A. ステマ規制の名宛人は商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。投稿者本人は直接の規制対象ではありませんが、だからこそ依頼した事業者側が責任を負います。依頼する側の管理責任として捉えるべき問題です。
まとめ
今回の措置命令は、「対価を伴う依頼投稿を、広告と分からない形で行うこと」が明確にアウトであると改めて示したものです。ステマ規制は内容の真偽ではなく「広告であることの明示」を問うルールであり、責任を負うのは広告主です。依頼投稿・ギフティング・アンバサダー施策を行うすべての事業者にとって、他人事ではありません。広告表記のルール整備と、掲載中の表示の定期点検を、いま一度見直しておくことをおすすめします。
その依頼投稿、PR表記は本当に「明瞭」ですか?
ステマ規制はSNS施策の設計次第で、意図せず違反になり得ます。広告表記の位置や表現、依頼書への落とし込みまで、外部から一度チェックしておくことでリスクは大きく下げられます。
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※本記事は一般的な情報提供であり、個別の広告表現の適法性を保証するものではありません。実際の判断にあたっては、最新の法令・ガイドラインをご確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
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