「9割が効果実感」、本当に示せますか?
投稿日:
2026.05.12
更新日:
2026.05.12
─ 不実証広告規制と“数値訴求”の義務
2026年4月28日、消費者庁は尿失禁対策用下着を販売する事業者2社に対し、景品表示法第7条第1項に基づく措置命令を行いました。「業界トップクラス 吸収量200cc」「購入者の9割以上が効果を実感」といった訴求が、合理的な根拠を欠くものとして優良誤認に当たると認定されたものです。
自社の数値訴求の裏付けは、「求められたときにすぐ提出できる状態にあるか」という点が非常に重要です。
何が問題と判断されたのか
景品表示法第5条第1号が定める優良誤認表示とは、商品の品質や効果について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示を指します。本件で問題視されたのは、単体の文言というよりも、複数の表現が重なり合って生み出される効果保証イメージです。
具体的には、「業界トップクラス 吸収量200cc」「四層構造+吸収量200ccで多い日も安心」といった数値訴求に、「購入者の9割以上が吸収力・消臭力・清潔感の効果を実感」というアンケート由来の表現が組み合わされ、さらに泌尿器科医や医学博士、介護士・看護師のコメント、「第三者機関によるお墨付き」として品質評価機構の検査結果の引用が並んでいました。
性質の異なる根拠が一面に積み重なり、消費者庁は、これらを総合的に、本件商品を着用して失禁した場合に、200ccまたは100ccまでの尿であれば外側に漏れ出さないかのような印象を一般消費者に与えていた、と認定しています。
景品表示法第7条第2項に基づく不実証広告規制より
消費者庁が事業者に対し表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めた際、指定の期日以内に提出できなければ、当該表示は優良誤認とみなされます。
本件では、1社は資料を提出したものの、合理的な根拠を示すものとは認められませんでした。もう1社に至っては、期間内に資料を提出すらできていません。いずれも、実体としての効果の有無を争う以前の段階で結論が出ているといえます。
「実際に効果があるかどうか」よりも先に、「合理的根拠資料があらかじめ手元にあるかどうか」が問われるという制度設計です。これは下着分野に限った話ではありません。健康食品や化粧品の分野でも、「○%が効果を実感」「医師監修」「業界No.1」「臨床試験で実証」といった訴求は、まったく同じ構造のリスクを抱えています。表現が魅力的であるほど、裏付けの整備が後追いになりがちな点もまた、業界を超えて共通する課題と考えられます。
担当者の方が今日から自社ページを見直すうえで意識しておきたいのは、数値訴求の根拠資料が、社内のどこに、どのような形で保管されているか、求められたときに即座に取り出せる状態にあるか、という点です。
「9割が実感」等のアンケート結果については、対象者の属性、設問の中立性、実施時期といった面で、合理的根拠として通用する設計になっているかを点検する必要があります。
医師や専門家のコメントが商品そのものの効果を保証するように読める書き方になっていないか、第三者機関の検査結果が広告で訴求している効果と直接対応しているか(例えば吸水堅牢度の検査結果は、「200ccまで漏れない」ことの直接的な根拠とはなり得ません)も、あわせて確認が求められます。
表示をつくってから根拠を探すのではなく、根拠を整えてから表示をつくる。この順序を逆にしないことが、結局のところ景表法対応のいちばんの近道であると考えられます。
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