「9割が効果実感」本当に示せますか?数値訴求と不実証広告規制の落とし穴
投稿日:
2026.05.12
更新日:
2026.08.11
🎯 この記事のポイント
2026年4月28日、消費者庁は尿失禁対策用下着を販売する2社に措置命令を出しました。「業界トップクラス 吸収量200cc」「購入者の9割以上が効果を実感」といった数値・アンケート訴求が、合理的な根拠を欠くとして優良誤認に当たると認定されたものです。不実証広告規制(景表法第7条第2項)では、根拠資料を期日内に提出できなければ優良誤認とみなされます。カギは「効果があるか」より「根拠がすぐ出せるか」。健康食品・化粧品にも通じる論点を整理しました。
「○%が効果を実感」「業界No.1」「医師監修」——魅力的な数値訴求ほど、根拠の整備が後回しになりがちです。しかし景品表示法では、その裏付けを「求められたときにすぐ提出できる状態にあるか」が問われます。実際の措置命令をもとに、その意味を確認します。
何が問題と判断されたのか
景品表示法第5条第1号が定める優良誤認表示とは、商品の品質や効果について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示を指します。本件で問題視されたのは、単体の文言というより、複数の表現が重なり合って生み出される「効果保証イメージ」でした。
具体的には、次のような性質の異なる根拠が一面に積み重なっていました。
- 「業界トップクラス 吸収量200cc」「四層構造+吸収量200ccで多い日も安心」といった数値訴求
- 「購入者の9割以上が吸収力・消臭力・清潔感の効果を実感」というアンケート由来の表現
- 泌尿器科医・医学博士・介護士・看護師の専門家コメント
- 「第三者機関によるお墨付き」としての品質評価機構の検査結果の引用
消費者庁は、これらを総合的に見て、着用して失禁した場合に200ccまたは100ccまでの尿であれば外側に漏れ出さないかのような印象を一般消費者に与えていた、と認定しています。
不実証広告規制|「効果の有無」より前に結論が出る
景品表示法第7条第2項に基づく不実証広告規制では、消費者庁が事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めた際、指定の期日以内に提出できなければ、その表示は優良誤認とみなされます。
本件では、1社は資料を提出したものの合理的な根拠を示すものとは認められず、もう1社は期間内に資料を提出すらできていません。いずれも、実体としての効果の有無を争う以前の段階で結論が出ています。
つまり、「実際に効果があるかどうか」よりも先に、「合理的根拠資料があらかじめ手元にあるかどうか」が問われるという制度設計です。これは下着分野に限った話ではありません。
健康食品・化粧品も「まったく同じ構造」
健康食品や化粧品の分野でも、「○%が効果を実感」「医師監修」「業界No.1」「臨床試験で実証」といった訴求は、まったく同じ構造のリスクを抱えています。表現が魅力的であるほど、裏付けの整備が後追いになりがちな点も、業界を超えて共通する課題です。
✅ 数値訴求の自己点検チェックリスト
- 数値訴求の根拠資料が、社内のどこに・どんな形で保管されているか
- 求められたときに即座に取り出せる状態にあるか
- 「9割が実感」等のアンケートは、対象者の属性・設問の中立性・実施時期が妥当か
- 医師・専門家のコメントが、商品そのものの効果保証に読めていないか
- 第三者機関の検査結果が、広告で訴求する効果と直接対応しているか
特に第三者機関の検査については注意が必要です。たとえば吸水堅牢度の検査結果は、「200ccまで漏れない」ことの直接的な根拠とはなり得ません。検査項目と、広告でうたう効果が対応しているかを見極める必要があります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. アンケートで「9割が実感」と出たら、そう書いてよいですか?
アンケート結果があっても、対象者の属性・設問の中立性・実施時期などが、合理的根拠として通用する設計でなければ認められません。数字が出たことと、根拠として妥当なことは別です。
Q. 医師監修・専門家コメントがあれば安心ですか?
コメントが商品そのものの効果を保証するように読める書き方だと、優良誤認の一因になり得ます。監修の範囲を超えて効果を保証していないか、確認が必要です。
Q. 第三者機関の検査結果があれば根拠になりますか?
検査項目が、広告でうたう効果に直接対応している必要があります。別の項目の検査結果を、あたかも訴求効果の裏付けであるかのように示すと、根拠として認められないことがあります。
まとめ|根拠を整えてから、表示をつくる
この事案が示すのは、「表示をつくってから根拠を探すのではなく、根拠を整えてから表示をつくる」という順序の重要性です。数値・アンケート・専門家・第三者機関——どれも強力な訴求材料ですが、それぞれが広告表現と正しく対応し、いつでも提出できる状態になっていなければ、積み重ねるほどリスクになります。この順序を逆にしないことが、結局のところ景表法対応のいちばんの近道です。
その数値訴求、根拠をすぐ提出できますか?
「○%が実感」「業界No.1」「医師監修」は、根拠と広告表現の対応がずれると優良誤認になります。専門コンサルタントが、数値訴求と根拠資料の整合を点検し、リスクの指摘だけでなく、いま持っている根拠で言える表現までご提案します。
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※本記事は消費者庁の公表資料等に基づく一般的な情報提供であり、個別事案の適法性を保証するものではありません。最新の運用や個別のご判断については、消費者庁の公表資料をご確認のうえ、専門家にご相談ください。
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